キミと桜を両手に持つ
episode07
ピピッと体温計が鳴り、画面を見た藤堂さんは溜息をついた。
「やっぱり熱が出たな」
表示を見ると37.9度。
前日から調子が悪く思考もネガティブになっていたのはどうやら風邪で具合が悪かったらしい。寝室のベッドで寝ていた私はのそりと起き上がった。
「ごめんなさい。せっかく今日は家具を買いに行こうって言ってくれたのに」
「大丈夫。また今度買いに行けばいいから」
彼は近くのドラッグストアで買ってきた熱冷ましシートの袋をビリっと破くと、フィルムを剥がしてシートを私の額にピタリと貼り付けた。
「凛桜、お粥作ってみたんだけど食べない?」
「えっ、お粥作ってくれたんですか?」
昨晩食欲がなくてオフィスでチョコレートを食べただけ。あれから何も食べてない。お粥という言葉を聞いて急にぐぅ〜とお腹が鳴ってしまった。それを聞いた藤堂さんはクスリと笑った。
「ベッドまで持ってこようか?」
「大丈夫です。起きてテーブルで食べます」
ベッドから降りようとすると、藤堂さんは両腕を私の体の下に入れた。そして「つかまって」と言っていきなり私を抱え上げた。
「えっ、待って!これくらい自分で歩けます!」
「いいから、ちゃんとつかまって。でないと落ちるよ」
そう言われて慌てて首に腕を回すと、彼は私を抱き直した。するとさらに密着してしまい、頬が彼の胸元にピタリとくっつく。男の人というか藤堂さんの匂いがして、それに私とは全く違う固くて筋肉質な体をパジャマ越しに感じる。
顔を真っ赤にしながら抱えられてる私を見てクスクス笑いながら藤堂さんは私を軽々とダイニングテーブルまで運んだ。
キッチンの方からは野菜や卵が入ったお粥のいい匂いが漂ってくる。