悪役令嬢を期待されたので完璧にやり遂げます!

ヒロインは被害者ムーブがお得意でした


教室の前にはすでに二人の声を聞きつけた学生が大勢集まっていて、何事かと騒然とした様子だった。
マリアンヌにひどい仕打ちを受けたと嘆くロザリーと、それを慰め、己の婚約者(マリアンヌ)に激昂するジャルダン。
まるで何かの見世物のように騒ぎ立てる二人を、学生たちが遠巻きに囲みながらこそこそと喋っている。

そんな中、ベリックを連れたマリアンヌは戸惑いがちに――もちろん演技なのだが――近付いて、ジャルダンに声をかけた。

「あの、殿下? 何かございま」
「マリアンヌ! お前よくもロザリーを傷付けたな! 恥を知れ!!」
「マリアンヌ様ひどいですぅ~。私のこと恥知らずとか、頭が悪いとか……。私、私、エ~~~ン」
「ロザリー、可哀想に。私がこの性悪女を成敗するから待っているがいい」
「グスッ。はい、ジャル様」

マリアンヌの問いかけは、二人に思いっきりかき消されていた。

廊下にペタンと座りこんで明らかに泣き真似をしているロザリーと、正義のヒーローぶった台詞を吐くジャルダン。
やたら芝居がかっている二人は、まるでこの展開を待っていましたとばかりに生き生きとしている気がする。
それに、マリアンヌは頭が悪いとまでは言わなかった……はずだ。
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