悪役令嬢を期待されたので完璧にやり遂げます!

最後の嫌がらせ(階段落とし編)

予定外に『仲間外れ』という嫌がらせを追加することができたマリアンヌだったが、本命はこれからである。

放課後が近付き、とうとうロザリーを階段から突き落とす時がやってきたのだ。
これぞ悪役令嬢の真骨頂とも言える見せ場である。

嫌がらせ決行の舞台は、アレンの用意した地図を穴が空くほど眺めた結果、屋上に続く階段に決めた。
例のバカップルは、雨の日以外の放課後は毎日のように屋上で逢瀬をしているらしく、晴天に恵まれた今日なら確実に現場を通ると思われる。
これ以上の絶好の機会はないだろう。

いつも先に着いているジャルダンの元へとロザリーが駆け付け、二人は熱い抱擁を交わす――と、見たくもないものを偶然見せつけられてしまった不運な令息が語っていた。
それからは放課後の屋上に近付く酔狂な者など彼ら以外は皆無となった為、非常にやりやすい状況だと言える。

問題は、小説ではよくヒロインを突き落とそうとするのだが……。
今回は『突き落とす』ではなく、『突き飛ばす』だけにすることにした。

やはり女の子に傷を付けるなどあってはならない。
それに、被害者ムーブがお得意なロザリーのことだ。
仮に階段の踊り場に軽く倒されただけでも、階段の上から下まで突き落とされたと大袈裟に言って回るのは目に見えている。
ならばこちらもそれを利用するまで。

校舎の地図なら完全に頭に入っているわ。
最短ルートを爆走して階段の踊り場でロザリーを突き飛ばし、再びダッシュで戻って生徒会の定例会に出席すれば、私は鉄壁のアリバイができるってわけよ。

準備はバッチリだ。
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