悪役令嬢を期待されたので完璧にやり遂げます!

執事見習いは謎が多い

現在、学園から屋敷に戻ったマリアンヌは、執事見習いのアレンを問い詰めているところである。
……のらりくらりとはぐらかされているのだが。

「だから、どうしてアレンがあの階段にいたのよ? あの変な薬は何? おかげで私の方が浮気を疑われてしまったじゃないの!」
「ですから私にも色々と事情があるんですよ。あの女の言うことを信じる愚かな者など、優秀な学園にはおりませんから心配無用です。あ、一人だけいたな。あの馬鹿王子……」
「だからあなたは不敬なんだってば!」

終始こんな調子で、ちっとも要領を得ないのだ。
不毛なやり取りに疲れたマリアンヌは、馬鹿馬鹿しくなってソファーに乱暴に腰掛けた。
すると、アレンが何やらしおらしい態度で俯くのが目に入った。
長い前髪が彼の表情を隠していて、まるで泣いているかのような様子に、マリアンヌは慌ててしまう。
やがて、切なそうな声音でアレンがぼそぼそと話し始めた。

「実は……お嬢様が心配で堪らなかったのです」
「え?」
「心優しいお嬢様のこと……もし踊り場で揉み合いにでもなって、逆に階段から落とされてしまったら……そう思うと……」

アレン、そんなに私を心配してくれていたの?
いつも飄々としているから気付けなかったわ。

「アレン、私……」
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