悪役令嬢を期待されたので完璧にやり遂げます！

期待を裏切れない公爵令嬢

「アレン……。執事見習いのあなたはもういないのね。とても寂しいわ」
「うーん、確かに執事見習いではなくなるが、俺はこれからも違う形であなたの傍にいるつもりだ」

そう言ったアレンダイルは、マリアンヌの前で右膝を突いた。

「マリアンヌ・オーズリー、私と人生を共に歩いてほしい。どうか平和を取り戻した我がサレジオン王国で私の妻に……」

えええっ、私が王子妃に！？
……いや、もともと王子妃にはなる予定だったのよね、この国のだけど。
落ち着くのよ、私。

「きゃ～～～～っ！！　さすがマリアンヌ様！　大国の王子にプロポーズされるなんて！」
「婚約破棄後の断罪返しに続き、大物からのプロポーズなんて！　小説よりドラマチックですわ！」
「やっぱりマリアンヌ様は期待を裏切らない、令嬢の鑑ですわね！」

女生徒たちのテンションはマックスに達しているようだ。
期待していた以上の展開なのだからそれも仕方がないだろう。

「お嬢様は期待を裏切れない方なのですから、早く諦めてこの手を取ってはいかがですか？」

急に執事見習いの口調に戻ったアレンが、小声で揶揄いながらニヤッと笑う。
不思議と今はもう無いはずの長い前髪が見えた気がした。

確かに完璧な令嬢でいたいし、期待されたらやり遂げたい私だけれど。
今はそれよりも――

「私、あなたの前だけでは完璧な令嬢でいることを忘れられるみたい。……令嬢どころか猿らしいけれど」
「ははっ、マリアンヌなら猿でも大歓迎だ」
「もう！　でも私でよければアレンと結婚したいわ」
「マリアンヌ！」

破顔したアレンに抱きすくめられ、自然とマリアンヌも笑い出していた。