野獣皇帝と愛しき追憶の乙女 ~虐げられた紛いもの王女の政略結婚から始まる溺愛生活~
王女の戸惑いと芽生える恋心
初めてジンガルドと昼食を共にしたその日の晩。
私は部屋でジンガルドのことを思い返していた。
庭で再会を果たした後、私たちは食堂に移動した。ジンガルドは料理を先に並べるよう指示し、給仕の人たちを下がらせてしまった。
ふたりきりの状況に少し緊張したけれど、私たちは昼食を食べながらいろいろな話をした。おかげで、彼のことをだいぶ知ることができた。
私は彼をお忍びでナンパを繰り返す遊び人だと思っていた。でも、実際はそうじゃなかった。
むしろ、とても一途な人だった。
彼は、十二年前の私との出会いが覚醒の切欠になったのだと熱く語った。そして、それからずっと再会を望んでいたのだとも。
ジンガルドは野獣皇帝の二つ名に相応しく、ガッシリとした筋肉質な体格。顔立ちも彫りが深く強面だ。金の眼光は鋭くて、威風と共に威圧感も与える。
「……うぅうっ。そんな大男が頬を染めて『君が俺の初恋なんだ』って、あれは反則だよ──っっ」