野獣皇帝と愛しき追憶の乙女 ~虐げられた紛いもの王女の政略結婚から始まる溺愛生活~
お披露目会での出来事
一カ月後。
ドロシー先生の指導の甲斐あって、淑女として最低限の体裁は整った。
自信満々でとまではいかないが、ジンガルドのエスコートでお披露目の会場に向かう私の足取りは軽い。
踏みだすごとにシャンパンゴールドのドレスの裾が空気を孕んでふわりと揺れる。チラリと隣を見上げれば、ドレスとよく似た色の瞳が私を見つめている。
その眼差しは蕩けるように甘い。
「今日の君は女神よりなお美しいな」
多分にリップサービスを含んだ発言だと分かっていても、ドキリとしてしまう。
「ジンガルドもとっても素敵よ。その恰好、すごくよく似合ってる」
黒地に金モール刺繍が施された詰襟の盛装に身を包んだジンガルドは王者の風格にあふれ、つい見惚れてしまいそうになる。
私の賛辞にジンガルドは照れたように口もとを綻ばせたが、大広間を前にしてスッと表情を引き締める。