野獣皇帝と愛しき追憶の乙女 ~虐げられた紛いもの王女の政略結婚から始まる溺愛生活~
エピローグ

 やわらかな草の上に寝ころんで晴天を見上げる。
 日差しはぽかぽかと暖かで、時折頬を撫でてゆくのどかな風が心地いい。
 ここはサドニア神聖王国の王宮の裏手に建つ、国立学校の庭だ。
 そして私は──。
「ぅわっ、母上!? そんなところで寝ころんで、いったいなにをやっているんですか!」
 ガサリと草を踏む音がしたと思ったら、生垣の向こうからジンガルドによく似た面差しの少年が顔を出し、驚いた声を出す。
 ……そう、彼は私とジンガルドの次男アルフリードである。
「あら、見つかっちゃった。日向ぼっこよ。アルフリードも一緒にどう? 気持ちいいわよ」
「はぁ。大国タイラント帝国の皇妃たる人がはしたないですよ」
 誰に似たのか昔からしっかりした子で、若干十二歳にして母に対してこの言い草だ。
 ……うん、きっと大物になるわね。それこそ、将来この国を託すに十分なほどに。
「今は公務中じゃないもの」
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