野獣皇帝と愛しき追憶の乙女 ~虐げられた紛いもの王女の政略結婚から始まる溺愛生活~
諦観する皇帝と満喫する王女

 帝宮の政務室で、オズモルトが影をやって調べさせたという調査報告を聞く。
「調べましたところ、我が国に嫁してきたのは下女の生んだ第四王女。生後間もなくから離宮に捨て置かれ、王女教育はおろか、読み書きすら教えられていないようです。王女はなにをされてもへらへらと笑うだけ。声を発することもないとのことで。まともに言葉を話せるのかも定かでなく……」
 オズモルトの顔色は真っ青で、言葉の最後は尻切れトンボでその口内に消えた。
 俺は以前、外交の場で第一第二王女を目にしたことがあった。言葉を交わしたわけでもなく遠目に見ただけだが、ふたりとも華やかな美女で、スラリと背が高く女性らしいプロポーションをしていた。
 やって来た女はベール越しなので顔こそ分からないが背は低く、体は痩せてガリガリ。ドレスを膝まで捲り上げて剥き出しになった真っ白な足は棒のような細さで、粗忽な振る舞いを見るまでもなく、身体的な特徴からして別人であることは瞭然だった。
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