野獣皇帝と愛しき追憶の乙女 ~虐げられた紛いもの王女の政略結婚から始まる溺愛生活~
不本意な再会

 ジンガルドからの強引なナンパに驚いて尻尾を巻いて逃げ帰り、離宮に引き篭もること三カ月。
 ……さすがにほとぼりも冷めただろう! と、意を決して離宮を出た。
「おや、嬢ちゃん! ずいぶんと久しぶりじゃないか、心配してたんだ。なにかあったのかい?」
 久しぶりに見る食品配送のおじちゃんの笑顔が眩しい。
「おじちゃーん。ちょっと、いろいろあってね」
 対する私は、口もとを引きつらせながらこう答えるのがやっと。
 私だって、まさか夫となる男がお忍びで帝都に下りて女性を引っかけているとは想像もしなかった。しかも、その夫にナンパされてしまうとか。いったい、どんな悪い夢だろう。
 彼がどんな頻度で遊び歩いているのかは分からないが、また会ってしまうのを警戒し、おちおち出歩く気にはなれなかった。
 それも三カ月引き篭もって過ごし、さすがに限界に達したわけだけれど。
「あの! それより、また今日も乗せていってもらっていいかしら?」
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