残念姫、王子に溺愛される

【切ない三角関係】

“あくまで恋愛対象ではないが、大切な人”

この言葉には、深い意味がある。


恋羽は知らないけど、僕と恋羽は異父兄妹だ。
僕の育ての母さんは、子どもが産めない身体だった。

それを受け入れて、父さんは母さんと結婚した。

子どもが出来なくても、幸せだった。
でも、母さんの友人達は子どもを当たり前のように生んで育てている。

“出来ない”と思えば思う程、母さんの抑えていた欲が膨らんだ。

「お願いがあります」

そして母さんは、父さんと恋羽の両親にお願いをした。

私の代わりに、私の子どもを生んでください――――――と。

僕の父さんと、恋羽の父親は親友。
そして恋羽の母親を巡って争ったこともあり、更に恋羽の父親は父さんから恋羽の母親を奪ったらしく負い目がある。

そんな複雑な関係性だったのもあって“四人だけの秘密として”受け入れたのだ。

そして、父さんと恋羽の母親の体外受精で僕が生まれた。

その事実を知らないまま、僕は恋羽に恋をした。

恋羽も僕を慕ってくれて、僕達はずっと一緒にいた。

『おじさん、将来恋羽と結婚してい?』

中学生に入学する前。
僕は恋羽の父親にそう言ったことがある。

でも『絶対ダメ』と全力で拒否された。

その理由がずっとわからなかった。
その手の話をすると、おじさんは血相を変えて怒るから。

その理由を知ったのは、父さんと母さんが離婚した時だ。

真実を知って、僕は全てを悟ったのだ。


僕は恋羽を好きになってはいけない、と。



『緋月くん。
緋月くんが、私の彼氏になって?』

そんな時、恋羽から告白を受けた。
あいつに騙され、誰のことも信じられなくなった恋羽。
大学を休学し、外出さえもしなくなった。

ボロボロに傷ついた恋羽が、僕に縋るような視線を向けた。

きっと……僕が好きというよりも、もう二度と傷つきたくないから僕に助けを求めたのだ。

『緋月くんは、絶対に私を傷つけないでしょ?』

僕だって今すぐにでも恋羽を恋人にし、僕が恋羽を守りたい。

でも僕達は…異父兄妹。


『ごめんね。
僕にとって恋羽は“妹”
女としては見れないんだ……』


恋羽が手に入らなくていい。

でも恋羽の相手は“僕が認めた人間に”任せたい。

そのくらいのワガママは許されるはずだ。


「――――恋羽、やっぱり僕は……
歩稀との結婚を祝福出来ない………!!」


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