呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
5/黒猫との契約(アメリ)
(あの女の、どこがいいんですの!?)

 テランバ公爵家の令嬢アメリは、身体の奥底から湧き上がる怒りを堪えきれず、近くに置いてあったゴミ箱を勢いよく蹴りつけた。

(イブリーヌ・ミミテンス……!)

 ある日突然アヘルムス国からやってきた女は、ヘスアドス帝国の皇帝であるオルジェント・ドゥム・アヘンドスと結婚式を挙げた。

(オルジェント様に相応しいのは、このわたくしですのに……!)

 プラスチック製のゴミ箱はゴロゴロと、アスファルトの上に転がる。
その場に勢いよく、中身がぶち撒けられた。

(公共の場で、オルジェント様の笑顔を引き出すなど……!)

 怒りに支配されたアメリはハイヒールの尖った部分で、その場に散らばった腐ったりんごを何度も踏んづけた。
 細切れになるまで、際限なく。

(ありえませんわ……!)

 彼女の脳裏には、先程目にした光景が何度も繰り返し再生されている。
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