呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない

8/亡霊の女王

(陛下と、口づけを交わしてしまった……)

　満足げに微笑む夫の姿を、イブリーヌは生涯忘れることはないだろう。

　昨夜交わし合った際の感覚を思い出しながら自らの唇をなぞった彼女は、心の奥底から湧き上がる不思議な感情に、首を傾げた。

「陛下のことを考えるだけで、身体の奥底が熱い、なんて……」

　夫と触れ合うのが久しぶりすぎて、イブリーヌはおかしくなってしまったようだ。

(このままじゃ、陛下に嫌われてしまうわ……！)

　平常心に戻らなければと視線をさ迷わせた彼女は、いつの間にか自身の横たわるベッドの上に、白猫が姿を見せていると気づく。

『それはずばり、恋だね』

　ハクマはイブリーヌに向かってそう静かに宣言すると、彼女の腰元に頬を寄せた。

「え……？」

　心の中で自問自答していた彼女は、夫に恋をしていると白猫から指摘をされて固まる。
　まさか彼に対する想いが口から出ているなど、考えもしなかったからだ。