呪われた死神皇帝は、亡霊の愛し子に愛を囁けない
2/ここに至るまでの経緯と呪い (オルジェント)
(また、か……)

 悪しき魂を刈り取る。
 それがヘスアドス帝国皇帝、オルジェントの仕事だ。

 大鎌を華麗に振り回すその姿はいつしか死神と呼ばれ、自国の国民からも恐れられるようになった。

 孤独の皇帝は今日も、刈り取った魂が宙を舞い、アヘルムス国へ向かって飛んでいく姿を、感情の籠らぬ虚ろな瞳で見つめていた。

『どうしていつも、ただ見ているだけなんだい?』

 彼の足元で丸まる白猫が、オルジェントを非難するように囁いた。

『いつも言っているじゃないか。追いかけて消滅させないと、後々面倒なことになると』

 悪しき魂は束になると、未練や憎悪が増強され、人々に牙を向く。

(俺は皇帝だ。帝国民を守る義務がある。だが……他所の国がどうなろうが、知ったことではない)

 アヘルムス国はオルジェントにとって、目の上のたんこぶだった。
 彼が逃した悪しき魂達が手を取り合い、強大な化け物となり牙を剥いたところで、オルジェントにとってはメリットしかない。

(こちらに害をなすほどに成長するのであれば、化け物ごと斬り伏せればいいだけだ)

 直接手を下す人間が減るのであれば、彼にとっても願ったり叶ったりな話だ。
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