超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する

第32話 天才とあざと女は師弟関係になる

「ちょっと！痛いわね！離してよ！」

不本意ながらシンに図書館から引きずり出されたナミルは憤慨していた。
どんなに苦情を言ってもシンは手を離してくれず、ズンズン引っ張られる。
シンは中央施設の多目的ホールまできて、ようやくナミルの手を離した。

「あー、うっさかった」

「どういう意味よ」

「ず～っと近くで叫ばれて、たまらんかったって意味だよ」

「だったらさっさと離せば良かったじゃない！」

「それで、おめーが図書館に戻ったら、またメンドクサクなんだろーが」

「どうしてよ！アンセムさん１人残したら可哀想じゃない！」

「やっぱ、空気読めてねーな」

「な、なんですって～！？」

顔を真っ赤にして怒るナミル。

「シンにそんなこと言われるなんて、人生最大の汚点だわ！この無神経マイペース男にだけは言われたくないわ！」

「実際読めてねーんだから、仕方ねっつーの」

ナミルの悪口雑言に怒るでもなく、シンは淡々と諭す。

「何がよ！」

「いつも女にチヤホヤされてる色男が醜態晒したんだぜ。おめーがいたら、また自分取り繕って、行動に出れねーだろーが」

「なによそれ、意味わかんないわ」

「ああいう女に苦労したことないタイプは、一度コテンパンに凹めばいいんだ。プライドなんか捨てちまえってんだ」

言い捨てるシン。
シンはテラスを思いやっていた。
アンセムのことは気に食わないが、テラスが好きな男が奴なのだから仕方ない。
どうにかして、テラスの気持ちに気付いてほしかった。
どうしてあの色男は、テラスの真っ直ぐな気持ちに気付かないんだろうか。

「俺ですらわかるのに…」

「何独り言言ってるのよ。
テラスさんみたいな人が彼女なのよ。アンセムさんの苦労は並みのものじゃないわよ。あの人変人だもの」

ナミルは完全にアンセム派だ。