超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する

第53話 不満をぶつけられた天才は動揺する

ナミルは悩んでいた。
ついにザキリオから告白の返事を催促されてしまったのだ。
とりあえず、返事は保留にさせてもらっている。

ザキリオとは何度も一緒の時間を過ごした。
会話が途切れることはない。
一緒にいて楽である。
おちゃらけた性格は嫌いではない。
見た目だって、アンセムに比べたらもちろん劣るが、平均よりはずっと上だろう。
自分に対して、とても優しくしてくれる。
側にいて、嫌な気持ちになったことなど一度もない。

だけど、どうしてだろうか。
積極的に「YES」と答える気持ちにはなれない。
決め手がないのだ。
肝心の「好き」と思う気持ちがない。
好ましい人物ではあるが、それは恋愛感情ではない。

ザキリオはたくさんの誠意を見せてくれた。
決め手がなくても、付き合いを深めれば何か変わるだろうか。
難しく考えず、お互いをもっと知るために付き合う選択もありだろうか。
思考は堂々巡りだ。

答えが出せないまま、ナミルは図書館に来ていた。
本の返却のためだが、アンセムの顔を見たい気持ちもあった。

「こんにちは」

カイに挨拶をする。

「ああ」

カイは短く返事をし、資料を読み続けた。

「これ、お願いします」

「返却だな」

受けとって処理をするカイにナミルは話しかけた。

「今日アンセムさん来てます?」

「ああ、仕事を頼んでいる。図書館のどっかにいるぞ」

「そうですか。ありがとうございます」

図書館のどっか。

視界が限られ、まるで厄介な迷路のようなつくりの図書館で、たったそれだけの情報で探せるとは思えなかった。
とりあえず、生物学のコーナーまで行ってみることにする。
授業にてこずっているのは相変わらずで、なんとか自分でもわかるように書いてある参考書を見つけたかった。
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