超人気美男子の彼女になった平凡女は平和な交際を求めて苦悩する

第61話 ずっと一緒に

アンセムはテラスと品種改良の畑に来ていた。
必要な手入れをし、テラスの質問攻撃にしばらく付き合った後、小川のほとりで座って休憩した。
テラスはまだまだ元気で、1人であちこちを見ていた。

流れる水を眺めながら、自分のこれからについて考えるアンセム。

(ここに来ると落ち着くな…)

生物学を専攻した理由は、得意分野だと自覚があったからだった。
専門を品種改良にしたのは、時間はかかるが手をかけたことが目に見える植物たちが好きだったからだ。
カイに司書の後任にと打診される前は、なんの迷いもなく、この道に進もうと思っていた。

図書館の仕事は嫌いではない。
むしろ性に合っているのではないかと思う。
打診後、カイはそれまで頼まなかった仕事を色々と任せるようになった。
それは、自分に図書館の仕事内容を無理なく体験できるようにという、カイの心遣いなのだろう。

膨大な書物の管理は想像以上に複雑で大変だが、遣り甲斐は感じる。
細々と、淡々とした作業は結構好きだ。
あの大きな施設を自分が長となって管理することにワクワクしている自分がいた。
また、外部施設ともかなり繋がりがあるようで、広い人間関係が構築できるのも楽しそうだ。
カイに話をされてから、時間が経てば経つほど、司書の仕事に気持ちが傾いている自分をアンセムは感じていた。

しかし、この前の話を聞いて、悩み始める。
自分に寮生たちをフォローできるのだろうか。
常に注意深く彼らの行動に目を配るという行為に負い目を感じる。
さらには、カップリングについての会議もあるというのだ。
監視、監督のような行動に、正直嫌悪感があった。

自分は今まで自分で考え、自分で決断してきたはずである。
皆もそうであると思っている。
それが、大人の指しがねだったとしたら?

司書の仕事は引き受けたい。
しかし、それ以外のことには関わりたくないと思っている自分がいた。
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