春よ、瞬け。


あれは、わたしがまだ小学4年生の時だった。

両親が共働きで帰りが遅かった為、わたしはよくお隣の東郷家にお邪魔して両親の帰りを待っていた。

お隣には、5歳年上のお兄ちゃんがいて、わたしは冴くんと呼んでいた。

冴くんはピアノが弾けて、中学の卒業式に向けて森山直◯朗の"さくら"を弾く練習をしていた。

わたしは、冴くんが"さくら"を弾いている姿を見るのが好きで、冴くんの演奏に合わせて歌ったりしていた。

かっこよくて、優しくて、ピアノが弾けて、わたしが「お腹空いたぁ」と言うとご飯を作ってくれた冴くんに、わたしは幼いながらに恋心を抱いていた―――――



















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