さくらが散る頃

悪魔の子

 報道が加熱している。テレビをつける度に犯人探しの特集が組まれている。佐竹花梨の証言は今のところ信憑性が低いということで報道機関には出ていない。おかげでまだ動くことができる。

 今のうちに早く決着をつけなければならない。

 一晩経ち私は高松文子の家へ向かった。

 立派な一軒家だった。庭の手入れも行き届いていて、都心から多少離れているので緑も溢れていて、かといって都心への交通の便も悪くない最強の立地だと思う。

 インターホンを鳴らすと女性の声がして、おそらくモニターに映ったであろう私の顔を見るなり「今開けますね」と言った。

 出てきたのは高松亮彦の現在別居中の妻の高松典子、そしてその後ろから娘の高松みなみも顔を出した。

「義母の最期を看取ってくださりありがとうございました」
「いえ、穏やかな最期でしたよ」
「そうですか」

 典子は視線を下げうつむいた。

「片付けでしたね、お手伝いします」
「ありがとうございます、主人から伺ってとてもいい方だったので頼んだらどうかと言われました」
「今日は慎介くんもいないんですか?」
「慎介はもう自立して家を出てます」
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