さくらが散る頃

さくらが散る頃

 さくらが散る頃までに私はこの物語のかたをつけるつもりだった。
 結局、終わってみれば実際さくらが散る頃までにかたがついた。

 それは実際思い描いていたものとは違う、予想外の結末だった。

『ありにゃんどうきょなの』

 犯人の供述はこうだった。

「ど、どうきょ? 同居? 一緒に住んでたってこと? 誰と?」

 凌介は大きく首を傾げた。
 
「じゃなくて、同担拒否、略して同拒」

 透子が補足する。

「だってよ、陸、それくらい知らないと若者の会話に乗れないよ?」

 凌介は自分が知らなかったのを棚に上げて陸に話を振る。
 そもそも同拒の話をしているのは陸なのに。
 
「俺は知ってたよ、知らなかったのはお前だろ」

 ふたりのやり取りを横目で見ながら透子が小さく息を吐く。

「ホストの世界の話、同担、同じ担当、つまり同じ推しってことね、それが拒否」
「というと?」

 凌介がまるで理解できないというような顔で透子の方を見る。

「やっぱお前わかってねーじゃん」

 そう陸に突っ込まれる。

 陸は気を取り直して話をは続ける。
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