さくらが散る頃

太陽の影

 私たちに捜査の手が伸びる、そうなると少なからず私たちの仕事にメスが入ることになる。
 それはまずい。
 私の今の仕事が廃業になるのは構わないけど凌介には未来がある。もしかしたらまた医者に戻るかもしれない。
 それに私だって調べられるわけにはいかない。

「とりあえずすぐ戻るからそこにいろよ」

 陸にそう釘を刺され凌介も私も仕事をキャンセルする連絡をした。幸い凌介のところも後日でいいと言ってくれ、高松久子の遺族にも明後日で構わないと言ってもらえた。

「さて、こうなると犯人はあいつ、だよな?」

 私はゆっくりとうなずく。

 そう、犯人は野島裕之で間違いない。これは佐竹への復讐だ。
 最初私は佐竹のことを知っているんじゃないかと美海の父親と接触をした。
 すぐに話し出してもうまくいかないので接点を作り、二度目に聞き出すつもりだった。

 だけど状況が変わった。
 佐竹のことがわかったからだ。だからこのままフェードアウトするつもりだったけど、佐竹花梨のことが気になった。
 佐竹花梨に恨みを持つ人間がいないことは警察がこれだけ捜査してなんの進展もないことからわかる。
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