ダーリンと呼ばせて~嘘からはじめる三カ月の恋人~

思わぬ告白

 社内は今キャリア面談が実施されている時期だった。

 社員の中長期的なキャリア形成とその実現に向けて上司と話し合う時間。部下の自律的な成長を促進するための貴重な機会。
 
 もちろんそのキャリア面談は直属の上司である安積さんと行うわけだが。


「四宮は今の部署でどう? 四宮の意向に合う仕事が出来てる?」

「はい」

「頑張ってくれてるよな。無茶いうことにも嫌な顔せず引き受けてくれたりして助かってるよ」

 そんな風に優しく言われて勝手に頬が熱くなってしまう。自分のしていることが正解かの自信が持てない時もある。それでも出来ることの精一杯で応えてきた。それをそんな風に受け止めてもらえていると思うとそれだけで救われる。

 そして何より単純に嬉しい。
 
「四宮、もう何年目になるっけ」

「今年で四年目になります」

「そっか、もうそんななるんだ」

 早いなぁ、と昔を懐かしむように目を細めてくれる安積さんの表情が愛しい。肘をついて顎に手をやる骨ばった指先が長くて、血管の浮いた手に視線を奪われて変にドキドキして。目のやり場に困って自分の手の甲を見つめつつ、ああ自分と全然違う、なんて思って結局心拍数は上がるばかり。

 ドキドキするんだ、安積さんと二人だと思うと。
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