罪深く、私を奪って。

先輩の彼氏

先輩の彼氏



「もう! 亜紀さん起きてくださーい」
散々酔っぱらって大騒ぎした亜紀さんは、今はテーブルにつっぷして、気持ちよさげな寝息をたてていた。
「こんな所で寝てないで、帰りましょうよ」
どんなに声をかけても熟睡中の亜紀さんが目を覚ます気配はなく、仕方なく肩を乱暴に揺ると、ようやく薄らと目を開けてくれた。
「んー、もう帰る時間ー? じゃあ迎えに来てって電話しなきゃ……」
亜紀さんは寝起きのガラガラ声でそう言うと、ポケットから携帯電話を出して耳に当てる。
「あ、もしもしダーリン? あたしー。飲みすぎちゃったー。いつもの店にいるから車で迎えにきてぇ……」
半分寝ぼけながらそう言うと、電話を切りまたテーブルにつっぷして寝息をたてはじめる。
そんな亜紀さんの寝顔を見ながら、思わず苦笑いした。
あの男勝りの亜紀さんが『ダーリン』なんて言うなんて、本当にラブラブなんだろうなぁ。
どんな男の人と付き合ってるんだろう。
亜紀さんの彼氏が迎えに来るのを、少しわくわくしながら待っていると、隣のテーブルのOLさん二人組が、顔をよせて話しているのが聞こえてきた。
「今入って来た人かっこよくない?」
「本当だ、一人で来たけど待ち合わせかなぁ」
その弾んだ声に、思わず興味本位で後ろを振り向くと、背の高い男の人がこちらに向かって歩いてくるところだった。
男らしく精悍な顔立ち。
姿勢のいい綺麗な立ち姿。
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