おてんば男爵令嬢は事故で眠っていた間に美貌の公爵様の妻(女避け)になっていたので土下座させたい
夫婦けんか・セイラ視点
セイラは元の部屋に戻った。
セイラは実家に帰れないので一時的な避難として元の部屋で過ごしている。
表面上は夫婦喧嘩ということになっている。
イェルガーが説得しに来る時間だ。
顔の痣はキレイに無くなった。
セイラとしては殴ってしまった事を謝りたい気持ちもあるが、何をされるかわからないので意地になっていた。
「セイラ、土下座でも何でもするから許してくれ」
セイラは土下座という言葉にピクリと反応したが、再びそっぽを向く。
「土下座なんていりません。しばらく距離を置きましょう」
「そんなに俺が嫌なのか……」
「嫌というか、いつまでお芝居をしているの?」
「芝居?」
心底わからないと言うような疑問が返ってきた。
ここはハッキリと言わねば。
「イェルガーが真面目なのは良いことです。ですが、愛妻家のフリはもう充分です。二人きりの時は普通にしてほしいわ」
「え?」
「うん?」
何か間違ったこと言っただろうか。
「まったくわかっていないんだな。驚いた」
「驚いたならそういう顔してください。楽しい時は笑い、悲しいときは悲しい顔してください」
「そうすれば許してくれるか?」
「それとこれとは、ちょっと……」
イェルガーが少しだけ距離をつめる。セイラが少しだけのけぞる。
「芝居じゃない」
「え?」
「愛妻家のフリでもない」
イェルガーがセイラの左手を掴む。真剣な目で見てくるので最後まで聞こうと思う。生唾を飲み込み、次を待つ。
「セイラ……好きだ」
ハッキリとイェルガーは甘く微笑んでそう言った。
「キャーーーー」と邸に響いた悲鳴に何事かと執事と侍女が部屋にやって来る。
黄色い声だったようだと、部屋に訪れた者は安心して胸を撫で下ろしていた。
セイラはついに落ちてしまった。
膝から崩れ落ち、胸を押え、耳まで真っ赤に染めて放心している。
イェルガーが使用人にもう少し二人きりにしてくれと言っているのが、遠くで聞こえる。意識が遠い。
両手で顔を覆うセイラ。
「……ずるい」
「そうか、これからは何度でもするからな」
「ずるい、小賢しい、卑怯者、人たらし、エロガッパ」
「そうか」
「私は、絶対に先に好きにはならないと決めていたのよ。それなのにえげつない」
「こちらとしては好きになってもらいたい、本当の夫婦になるんだろう?」
「それはそうだけど……」
「何度でも落とす、手段は選ばない」
そう言いながら、どこか恍惚とした悪そうな笑みを浮かべた。抗おうにも目が釘付けになるほど美しい。
「――――っ!」
「落ちてこい、セイラ」
セイラは一日に二度も落とされ、たぶん、この先この人から逃れることはできないと悟った。
セイラは実家に帰れないので一時的な避難として元の部屋で過ごしている。
表面上は夫婦喧嘩ということになっている。
イェルガーが説得しに来る時間だ。
顔の痣はキレイに無くなった。
セイラとしては殴ってしまった事を謝りたい気持ちもあるが、何をされるかわからないので意地になっていた。
「セイラ、土下座でも何でもするから許してくれ」
セイラは土下座という言葉にピクリと反応したが、再びそっぽを向く。
「土下座なんていりません。しばらく距離を置きましょう」
「そんなに俺が嫌なのか……」
「嫌というか、いつまでお芝居をしているの?」
「芝居?」
心底わからないと言うような疑問が返ってきた。
ここはハッキリと言わねば。
「イェルガーが真面目なのは良いことです。ですが、愛妻家のフリはもう充分です。二人きりの時は普通にしてほしいわ」
「え?」
「うん?」
何か間違ったこと言っただろうか。
「まったくわかっていないんだな。驚いた」
「驚いたならそういう顔してください。楽しい時は笑い、悲しいときは悲しい顔してください」
「そうすれば許してくれるか?」
「それとこれとは、ちょっと……」
イェルガーが少しだけ距離をつめる。セイラが少しだけのけぞる。
「芝居じゃない」
「え?」
「愛妻家のフリでもない」
イェルガーがセイラの左手を掴む。真剣な目で見てくるので最後まで聞こうと思う。生唾を飲み込み、次を待つ。
「セイラ……好きだ」
ハッキリとイェルガーは甘く微笑んでそう言った。
「キャーーーー」と邸に響いた悲鳴に何事かと執事と侍女が部屋にやって来る。
黄色い声だったようだと、部屋に訪れた者は安心して胸を撫で下ろしていた。
セイラはついに落ちてしまった。
膝から崩れ落ち、胸を押え、耳まで真っ赤に染めて放心している。
イェルガーが使用人にもう少し二人きりにしてくれと言っているのが、遠くで聞こえる。意識が遠い。
両手で顔を覆うセイラ。
「……ずるい」
「そうか、これからは何度でもするからな」
「ずるい、小賢しい、卑怯者、人たらし、エロガッパ」
「そうか」
「私は、絶対に先に好きにはならないと決めていたのよ。それなのにえげつない」
「こちらとしては好きになってもらいたい、本当の夫婦になるんだろう?」
「それはそうだけど……」
「何度でも落とす、手段は選ばない」
そう言いながら、どこか恍惚とした悪そうな笑みを浮かべた。抗おうにも目が釘付けになるほど美しい。
「――――っ!」
「落ちてこい、セイラ」
セイラは一日に二度も落とされ、たぶん、この先この人から逃れることはできないと悟った。