図書館の地味な女の子は…
1話 春の訪れ
俺の名前は高橋祐也。高校二年生
今年、先生の推薦で全国高校生小説大会に出場することになった。上位10位以内に入らないといけない。
理由はシンプル――「お前の才能ならいける。期待してるぞ」って、先生に言われたからだ。
何かと、俺は先生に頼りにされるらしい。
去年はバスケ部が人手不足だからって無理やり助っ人にされ、テニス部の大会にも引っ張り出された。
その前なんて、書道の大会にまで出されてる。書道なんて、半紙の裏表の区別すら怪しかったのに。
今回は小説。
なにがなんでも負けたくない。
闘争心に火がついた
そのために、俺は友達の誘いを断ってまで小説を書くために放課後を図書館で捧げていた。
静かで、誰にも邪魔されず、集中できるあの場所こそが、俺の戦場だった。
……そんな俺の“日常”が、ある日、ひとりの女の子の登場で変わり始めた。
黒髪をひとつに束ね、無表情で誰とも口をきかない。でもすごく綺麗で。
まるで図書室の一部みたいに静かで、存在感だけが異様にある。
誰も彼女の名前を知らなかったし、話しかける奴もいなかった。
でも、目が合えば、少しだけ――会話をする関係になった。
「こんにちは」
「……こんにちは」
たったそれだけ。でも、不思議とそっけないその返事が心地よかった。
その日から、止まっていた筆が彼女を題材に加速しはじめた。
まるで彼女に、物語の先を見せられているかのように――。
……ただ、この時俺は知らなかった彼女の正体を