図書館の地味な女の子は…
16話 遅刻
窓の外の光が、じわじわと傾きはじめた頃。
いつもならとっくに教室にいるはずの澪の席は、まだぽつんと空いていた。
チャイムが鳴り、授業が始まっても、澪は現れなかった。
(どうしたんだろ……)
祐也はノートを開きながらも、心ここにあらずだった。
澪が遅刻するなんて、今まで一度もなかった。
むしろ毎朝、誰よりも早く教室にいるくらいだったのに。
それだけで、どこか胸がざわついた。
そして、その日の三時間目。
廊下の向こうから、足音が近づいてくる。
ガラッ。
教室のドアが開いた。
ゆっくりと入ってきたのは、春川澪だった。
いつもと同じ、淡々とした足取り。
でも、祐也にはすぐにわかった――どこか、違う。
「春川さん、めずらしいねどうかしたの?」
先生が声をかけると、澪は小さく首を振った。
「……寝坊しました」
たった一言。
それだけで教室はまた、静寂に戻る。
けれど祐也の目は、彼女の左手に釘付けになった。
手の甲に、小さな擦り傷がひとつ。
朝にはなかったはずの、それが――妙に、引っかかった。
(……なんで? どこでそんなの……)
祐也の胸の奥が、じわりと重くなる。
夢だと思っていたあの夜の出来事が、現実のように浮かび上がってくる。
まるであの晩から、何かが少しずつ狂い始めているような――そんな気がしていた。
ーーー放課後
いつもならとっくに教室にいるはずの澪の席は、まだぽつんと空いていた。
チャイムが鳴り、授業が始まっても、澪は現れなかった。
(どうしたんだろ……)
祐也はノートを開きながらも、心ここにあらずだった。
澪が遅刻するなんて、今まで一度もなかった。
むしろ毎朝、誰よりも早く教室にいるくらいだったのに。
それだけで、どこか胸がざわついた。
そして、その日の三時間目。
廊下の向こうから、足音が近づいてくる。
ガラッ。
教室のドアが開いた。
ゆっくりと入ってきたのは、春川澪だった。
いつもと同じ、淡々とした足取り。
でも、祐也にはすぐにわかった――どこか、違う。
「春川さん、めずらしいねどうかしたの?」
先生が声をかけると、澪は小さく首を振った。
「……寝坊しました」
たった一言。
それだけで教室はまた、静寂に戻る。
けれど祐也の目は、彼女の左手に釘付けになった。
手の甲に、小さな擦り傷がひとつ。
朝にはなかったはずの、それが――妙に、引っかかった。
(……なんで? どこでそんなの……)
祐也の胸の奥が、じわりと重くなる。
夢だと思っていたあの夜の出来事が、現実のように浮かび上がってくる。
まるであの晩から、何かが少しずつ狂い始めているような――そんな気がしていた。
ーーー放課後