図書館の地味な女の子は…

21話 対策

祐也 side

週末まで、あと二日。

教室では何気ない顔を装いながらも、祐也の心臓はずっと落ち着かなかった。
一歩間違えれば――自分か、大毅が、本当に殺されるかもしれない。
その現実が、じわじわと首を締めてくるように重い。

放課後、大毅の家に向かう道すがらも、慎重に周囲を確認してから歩いた。
不用意な視線や、足音ひとつにも敏感になる。

「……今日も、見られてないよな」

小声で自分に言い聞かせる。
零に気づかれたら終わりだ。
あの“笑顔”の奥に隠れた、本物の“殺意”を思い出すだけで、背中が冷たくなる。

⸻

大毅の部屋には、すでに小型カメラが設置されていた。
ベッド脇、窓際、クローゼットの上――死角のないように配置した。

大毅は言う。

「お前、探偵とかになれるんちゃうか、マジで……。ここまでやるか、ふつう」

「普通じゃない状況だからな」

祐也は淡々と返しながら、自分のノートパソコンを開いた。
画面には、書きかけの小説の原稿。

「それも進めとんのか……」

「うん、日常を保つためにもな。変に不自然な行動したら、澪に怪しまれるから」

手を止めるわけにはいかない。
小説を書く時間すら、今は“カモフラージュ”になる。


（もしこの対策に気づかれたら、終わりだ。今度こそ、夢じゃ済まない）

背筋に汗がにじむ。
日常の皮をかぶった、殺意の足音がすぐそこにある。
その中で祐也は、小説を書き続ける。
震える手で、日常の言葉を紡ぎながら――ただ、無事に週末を超えることだけを願って