図書館の地味な女の子は…
26話 高校三年生
季節は春。
柔らかな陽光が差す街を歩きながら、祐也は駅前の書店のガラス窓に目を奪われた。
そこには――
『第12回 全国高校生小説大会 最優秀作品 “図書館の地味な女の子は…” 著:高橋祐也』
白地に黒の控えめなフォント。その隣には、静かにこちらを振り返るような少女のイラストが添えられていた。
何の装飾もないはずのその表紙が、祐也には眩しかった。――いや、どこか怖くもあった。
「……ほんまに、出たんやな」
隣で立ち止まっていた大毅が、ぼそっとつぶやいた。
手にとった本を何度も眺めては、ページを捲るでもなく、ただ黙っていた。
「まさか……先生から小説書いてみいひんて言われた時こんなことになる思わんかったよな」
「……うん」
書いたのは、夢の中。
零が存在し、大毅が死に、自分も殺された――終わりのない悪夢。
目が覚めたときには、ベッドの上。
それからすぐ、小説は完成された形でプリントされ、彼の手元に残っていた。
原稿の最後の一行は、目覚めた数日前の日付で終わっていた。まるで、意識を失う直前に、自分の手が勝手に最後まで物語を綴ったかのように。
「祐也、お前……まだ、怖いん?」
「……うん。ちょっとだけ。でも、それでも……“あの物語”は、俺が書いた。最後まで」
大毅が、肩を軽く叩いてきた。
「ほんまようやったよ」
その声に、祐也は小さく笑って頷いた。
柔らかな陽光が差す街を歩きながら、祐也は駅前の書店のガラス窓に目を奪われた。
そこには――
『第12回 全国高校生小説大会 最優秀作品 “図書館の地味な女の子は…” 著:高橋祐也』
白地に黒の控えめなフォント。その隣には、静かにこちらを振り返るような少女のイラストが添えられていた。
何の装飾もないはずのその表紙が、祐也には眩しかった。――いや、どこか怖くもあった。
「……ほんまに、出たんやな」
隣で立ち止まっていた大毅が、ぼそっとつぶやいた。
手にとった本を何度も眺めては、ページを捲るでもなく、ただ黙っていた。
「まさか……先生から小説書いてみいひんて言われた時こんなことになる思わんかったよな」
「……うん」
書いたのは、夢の中。
零が存在し、大毅が死に、自分も殺された――終わりのない悪夢。
目が覚めたときには、ベッドの上。
それからすぐ、小説は完成された形でプリントされ、彼の手元に残っていた。
原稿の最後の一行は、目覚めた数日前の日付で終わっていた。まるで、意識を失う直前に、自分の手が勝手に最後まで物語を綴ったかのように。
「祐也、お前……まだ、怖いん?」
「……うん。ちょっとだけ。でも、それでも……“あの物語”は、俺が書いた。最後まで」
大毅が、肩を軽く叩いてきた。
「ほんまようやったよ」
その声に、祐也は小さく笑って頷いた。