アラサーの私が、なぜか御曹司で超絶イケメンの年下男子から、溺愛されました
お見合い話
「葉子はもうすぐ30よね?」

家で夕食の後。居間でテレビをぼーっと見ていたら、母が唐突にそう言った。

「そうだけど、気にしてるんだから、言わないでよ」
「いい人はいないの?」

ドキッ

”いい人”って、恋人って意味だと思う。
すぐに吉田君を思い浮かべたけど、彼はもちろん恋人なんかじゃないわけで、それが悔しくて、

「いるわけないでしょ!」

と、怒りをぶつけるように答えてしまった。
母に怒るのは筋違いなんだけど、八つ当たりというか、一種の甘えかな。母なら、多少の理不尽は許してくれるだろう、みたいな。

たとえば朝寝坊した時、本当は自分の責任なのに、母親に向かって『なんで起こしてくれないのよ!』と怒鳴ったりするでしょ?
あれと同じだと思う。

「好きな人もいないの?」
「え?」

それならもちろん、いる。吉田君だ。でも、母はおろか、誰にも知られたくない。7つも年下の部下が好き、だなんて事は。

「なんでそんな事聞くのよ?」
「いいから、答えてちょうだい」
「……いないわ」

ほんの少しだけ、母に打ち明けたい気持ちがあって、間が開いて私は答えた。

すると母は小さく頷くと、父と何やらアイコンタクトを取った。
なんか、今日の両親はどこか様子がおかしい気がする。

「なあ葉子、これなんだが……」

父が、まるで自分に出番が来たと言わんばかりに、ローテーブルの下から大きめの封筒らしき物を取り出し、それを私の前にそっと置いた。
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