アラサーの私が、なぜか御曹司で超絶イケメンの年下男子から、溺愛されました
彼氏訪問
家に着いてしまった。

「ハアー、緊張するなあ」
「自分の家なのにか?」
「だからこそ、でしょ?」

車を父の車の後ろに止めてもらい、玄関で呼び鈴を鳴らして待つと、程なくしてドアが開き、母が出てきた。
母は、「お帰り……」と言い掛けたところで、固まっていた。

でも、それは無理もないと思う。
アラサーの娘が巨大なシャチの縫ぐるみを胸に抱え、その横には、見知らぬ長身の超絶イケメンが立っていれば、私でも固まると思う。

「お母さん、こちらは会社で同僚の吉田亮平さん」
「吉田と申します。突然お邪魔して申し訳ありません」
「え、あ、葉子の母です」

と母はしどろもどろで言い、亮を見上げて顔を赤くした。
次に母は私の肩越しに後方へ目をやり、私に視線を戻して『野田さんは来てないの?』と目で言ったので、私は小さく首を横に振った。

「入っていい?」
「も、もちろんよ。ささ、どうぞどうぞ」

靴を脱ぎ、母に揃えてもらってスリッパを履くと、「生ものなので……」と言って亮は母に菓子折りを差し出し、「あら、そんな気を使われなくても……」などと言って母はそれを受け取り、顔を更に赤くしていた。

そんな母を見ていたら、少しだけ私の緊張が解れたような気がした。
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