社長秘書に甘く溶かされて
第17話 事件解決に向けて
「私の名前は、永井鷹彦。永井鷹夜の兄です」
マルナガヤの社長の口から飛び出した言葉に、真奈美は息を呑んだ。
社長と社長秘書が兄弟? そんなの、鷹夜さんから聞いたことなかった……!
言われてみれば、どこか似ている気もする……。
鷹彦が黒髪、鷹夜が白髪のため、髪色のインパクトが大きく、なかなか気づかなかったのだ。
「あっ、そっか……『マルナガヤ』って、永井の名前から?」
真奈美がひとり納得した声を出すと、鷹彦は満足げにうなずく。
それから、彼は運転中の鷹夜に顔を向けた。
「鷹夜、私の家で冴原さんと話をしよう。そこでなら邪魔も入らないはずだ。会社に潜んでいるスパイだろうと、お前のストーカーであろうとも、ね」
「わかりました」
鷹夜の運転は、驚くほど滑らかだった。車は静かに夜の道を進む。
「ええと……鷹彦さんも、鷹夜さんのストーカーのこと、ご存知なのですね?」
「ええ。しかし、大学時代の鷹夜が拉致監禁された、あの夏までは単なるガールフレンドとしか思っていませんでした。……私は兄として、彼を守るべき立場だったのに、何も気づいてやれなかった。あの頃の鷹夜には、今でも悪いことをしたと思っていますよ」
鷹彦は心底申し訳無さそうな声色をしていた。
鷹夜は「もう終わったことですから」と前を向いて運転したまま、肩をすくめる。
やがて、鷹彦のものと思われる豪邸が見えてきた。やがて、鷹彦の豪邸が見えてきた。高くそびえる門が開き、車は静かに敷地内へと滑り込む。3人は車を降りて、汚れ一つない白い壁の豪邸の中に入っていった。
「……さて。私は世界屋製菓を訴えるつもりです」
鷹彦が紅茶を飲みながら、そう宣言する。鷹夜は淹れた紅茶を真奈美の前に置き、鷹彦の隣に座っていた。
「ただ、訴訟するにも証拠がないので、現状はポーズだけ、ということになりますね。それでも、世界屋製菓に対しては牽制になるでしょう」
「鷹彦さんは、世界屋製菓がマルナガヤの情報を盗んでいる、とお考えなのですね」
真奈美の問いかけに、鷹彦はうなずく。
彼女は鷹彦に、「世界屋製菓も同様にマルナガヤに盗まれていると考えている」と、自分が所属する会社の人間の考えを伝えた。鷹彦は眉根を寄せながら、考え事をしているようだ。
「なるほど……考えたくはないですが、弊社の中にも良からぬことを考える輩がいるかもしれませんね」
社長としては信じたくないだろう。だが、疑いを拭い去ることもできないはずだ。
鷹夜は「ですが、真奈美さんはある証拠を手に入れた。そうですね?」と真奈美に確認する。
真奈美は少し緊張しながらカバンの中を探り、手にした封筒をゆっくりと取り出した。
ふたりの視線がその動作をじっと追う。鷹彦は腕を組んで椅子に寄りかかり、鷹夜は表情を変えないまま指先でカップをなぞっていた。
真奈美が封を開け、中身をテーブルに置くと――。
鷹彦の眉がぴくりと動いた。
「……なるほど。これは、確かに……」
彼の表情が僅かに険しくなる。鷹夜はそれを無言で見つめ、指を組んだ。
その内容を確認し、兄弟と真奈美は犯人を追い詰める方法を話し合う……。
こうして、3人は事件解決に向け、静かに動き始めた。
〈続く〉
マルナガヤの社長の口から飛び出した言葉に、真奈美は息を呑んだ。
社長と社長秘書が兄弟? そんなの、鷹夜さんから聞いたことなかった……!
言われてみれば、どこか似ている気もする……。
鷹彦が黒髪、鷹夜が白髪のため、髪色のインパクトが大きく、なかなか気づかなかったのだ。
「あっ、そっか……『マルナガヤ』って、永井の名前から?」
真奈美がひとり納得した声を出すと、鷹彦は満足げにうなずく。
それから、彼は運転中の鷹夜に顔を向けた。
「鷹夜、私の家で冴原さんと話をしよう。そこでなら邪魔も入らないはずだ。会社に潜んでいるスパイだろうと、お前のストーカーであろうとも、ね」
「わかりました」
鷹夜の運転は、驚くほど滑らかだった。車は静かに夜の道を進む。
「ええと……鷹彦さんも、鷹夜さんのストーカーのこと、ご存知なのですね?」
「ええ。しかし、大学時代の鷹夜が拉致監禁された、あの夏までは単なるガールフレンドとしか思っていませんでした。……私は兄として、彼を守るべき立場だったのに、何も気づいてやれなかった。あの頃の鷹夜には、今でも悪いことをしたと思っていますよ」
鷹彦は心底申し訳無さそうな声色をしていた。
鷹夜は「もう終わったことですから」と前を向いて運転したまま、肩をすくめる。
やがて、鷹彦のものと思われる豪邸が見えてきた。やがて、鷹彦の豪邸が見えてきた。高くそびえる門が開き、車は静かに敷地内へと滑り込む。3人は車を降りて、汚れ一つない白い壁の豪邸の中に入っていった。
「……さて。私は世界屋製菓を訴えるつもりです」
鷹彦が紅茶を飲みながら、そう宣言する。鷹夜は淹れた紅茶を真奈美の前に置き、鷹彦の隣に座っていた。
「ただ、訴訟するにも証拠がないので、現状はポーズだけ、ということになりますね。それでも、世界屋製菓に対しては牽制になるでしょう」
「鷹彦さんは、世界屋製菓がマルナガヤの情報を盗んでいる、とお考えなのですね」
真奈美の問いかけに、鷹彦はうなずく。
彼女は鷹彦に、「世界屋製菓も同様にマルナガヤに盗まれていると考えている」と、自分が所属する会社の人間の考えを伝えた。鷹彦は眉根を寄せながら、考え事をしているようだ。
「なるほど……考えたくはないですが、弊社の中にも良からぬことを考える輩がいるかもしれませんね」
社長としては信じたくないだろう。だが、疑いを拭い去ることもできないはずだ。
鷹夜は「ですが、真奈美さんはある証拠を手に入れた。そうですね?」と真奈美に確認する。
真奈美は少し緊張しながらカバンの中を探り、手にした封筒をゆっくりと取り出した。
ふたりの視線がその動作をじっと追う。鷹彦は腕を組んで椅子に寄りかかり、鷹夜は表情を変えないまま指先でカップをなぞっていた。
真奈美が封を開け、中身をテーブルに置くと――。
鷹彦の眉がぴくりと動いた。
「……なるほど。これは、確かに……」
彼の表情が僅かに険しくなる。鷹夜はそれを無言で見つめ、指を組んだ。
その内容を確認し、兄弟と真奈美は犯人を追い詰める方法を話し合う……。
こうして、3人は事件解決に向け、静かに動き始めた。
〈続く〉