幸せの道しるべ~理想の時間に逢えるカフェ
1✩.*˚
シマエナガカフェは、五年前に亡くなった白井柊(しらいしゅう)の母、白井若菜(しらいわかな)の兄である高畑剛(たかはたごう)が経営しているカフェ。
現在大学生の柊は、叔父である剛に誘われて、週末、ここでバイトをしていた。
カフェを経営している剛は四十代半ばの、容姿端麗な自由人。東京で暮らしていたが五年前に若菜が亡くなった時、地元に帰ってきた。柊の父親は仕送りをしてくれてはいるが、ずっと離れて暮らしている。親も子も、お互いの生活に興味はなく連絡もめったに取り合わない。柊にとって剛は、母がいなくなってから唯一身近に感じている大人だった。
歌で稼ぎ、飽きたら絵を描いて稼ぐ。伸び伸びと広く自由な生き方をしていて、さらに器用で才能もある。思い描いたものを実行する能力のある剛さんに、ひっそりと憧れている。僕にとって眩しく明るい毎日を過ごしているように見えていた剛さんだけど、共に過ごしていると、別の少し暗い面も見えてくる。たまにどこか遠くを見つめ、黒い影がちらついているような表情にもなったりする。だけど、そんな陰な部分も含めて、僕は剛さんに憧れている。
憧れている一方で、剛さんと対比した自分には何もやりたいことがなくて、ずっと立ち止まっている気がしていて……周りから取り残されている感が強くなり、焦りも感じ始めていた――。
*
現在大学生の柊は、叔父である剛に誘われて、週末、ここでバイトをしていた。
カフェを経営している剛は四十代半ばの、容姿端麗な自由人。東京で暮らしていたが五年前に若菜が亡くなった時、地元に帰ってきた。柊の父親は仕送りをしてくれてはいるが、ずっと離れて暮らしている。親も子も、お互いの生活に興味はなく連絡もめったに取り合わない。柊にとって剛は、母がいなくなってから唯一身近に感じている大人だった。
歌で稼ぎ、飽きたら絵を描いて稼ぐ。伸び伸びと広く自由な生き方をしていて、さらに器用で才能もある。思い描いたものを実行する能力のある剛さんに、ひっそりと憧れている。僕にとって眩しく明るい毎日を過ごしているように見えていた剛さんだけど、共に過ごしていると、別の少し暗い面も見えてくる。たまにどこか遠くを見つめ、黒い影がちらついているような表情にもなったりする。だけど、そんな陰な部分も含めて、僕は剛さんに憧れている。
憧れている一方で、剛さんと対比した自分には何もやりたいことがなくて、ずっと立ち止まっている気がしていて……周りから取り残されている感が強くなり、焦りも感じ始めていた――。
*