だって、お姉様お望みの悪女ですもの
第1章

01



 王国の貴族が通う、セントベリー学園にて。
 日直で教室の鍵を職員室へ返しにいった帰り、イザベル・ファロンは担任からノートを運ぶよう頼まれた。
 ついていないと思いながらも、イザベルは依頼された生物準備室へと持って行く。

「えっ……」
 扉を開けたイザベルは、飛び込んできた光景に目を疑った。実の姉アデルとイザベルの婚約者ロブ・マクウェルの浮気現場に遭遇したからだ。
 混乱してうまく言葉が出てこない中、イザベルは何とか声を絞り出した。

「お姉様、ロブ様と何をしていたの?」
 アデルはイザベルの双子の姉だった。
 ファロン侯爵家に生まれた二人は、二卵性双生児で容姿はまったく似ていない。
 アデルがタンポポの綿毛のようにふわふわとした雰囲気なら、イザベルは灼熱の砂漠に生えている刺々しいサボテンのような雰囲気がある。二人は容姿も雰囲気もまるで違っていた。

 線の細いアデルはふるふると金髪を揺らしながら翠色の瞳に涙を溜める。
「ロブ様とは何も。ただお話をしていただけで……」
 アデルに同調するようにロブが大きく頷く。
「そうだ、イザベル。アデルとは他愛もない話をしていただけだ」
 二人の白々しい答えに、イザベルは乾いた笑みを浮かべた。

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