だって、お姉様お望みの悪女ですもの
第2章

03



 それからのイザベルは授業以外の時間をウィリアムの助手として過ごすようになった。
 あれ以来、アデルとロブには一度も顔を合わせていない。向こうが謝罪をしにきたら口を利くかもしれないが、自分からは行動しないと決めた。
 放課後、生物準備室へ行くとウィリアムが実験器具を使って何かを作っていた。

「バートラムさん、頼まれていた野草を森から摘んできました」
 イザベルは指定された野草を机の上に並べていく。これは昼休みに摘んできたものだ。指定される野草は知っているものばかりなので集めるのは簡単だった。

 売店で軽食を買い、学園の北にある森でウィリアムに頼まれた野草を摘みながら昼休みを過ごしている。
 これまで教室で一人軽食を取っていたが、今はピクニック気分を味わっている。これはこれで楽しい。楽しいけれど、イザベルには一つ気がかりがあった。

「あの、バートラムさんは私が怖くないんですか?」
 イザベルはずっと気になっていた質問をする。いくら一匹狼であるウィリアムでもイザベルの悪女の噂は耳にしているはずだ。
 自分がウィリアムの立場なら、イザベルの弱みを握ったとしても距離は置いておきたい。ただでさえ悪い噂のあるイザベルと関わって、何かの拍子に汚点がついては困るからだ。

 ウィリアムは顔を上げ、くすりと笑った。
「何故怖がる必要がある? あ、そこの夜に摘んだ満月花の蜜を取ってくれ」
 ウィリアムの指差す方向を確認すると、棚の一番上に『満月花の蜜』とラベルが貼られた瓶がある。イザベルは背伸びをして瓶を取り、ウィリアムのもとへ持っていく。

「私は学園一の悪女と言われています。私のような悪い噂だらけの女を助手にしようなんて普通は考えませ……きゃああっ!!」

< 10 / 37 >

この作品をシェア

pagetop