だって、お姉様お望みの悪女ですもの
第3章

04



 ***

 アデルは鼻歌混じりに卒業パーティーで着るドレスを選んでいた。
(色は何が良いかしら。ピンク、レモン、それともクリーム? うーん、どれも似合いすぎて迷うわ)
 ベッドの上に並べたドレスを取っては姿見で確認するアデル。これらは一ヶ月前にカタログから選んで注文し、両親に送ってもらった。

 ドレスだけでなく、装身具もそれなりの数を送ってもらっている。靴だけで三足、宝飾品だけで五点。
 イザベルにどんなものが送られたのか気になるが、所詮大したものではないだろう。昔からイザベルの服は質素だったから。

 アデルは自分だけ特別扱いされて優越感に浸る。
(ほんと、お父様もお母様も私には甘いんだから。まあ仕方がないわよね。私は身体が弱くてすぐに発作を起こしてしまう可哀想な娘なんだもの)
 アデルは机の上に飾ってある、ガラスドームの中のドライフラワーに目をやる。それはこの国で一年中どこにでも咲いている白くて小さな花、ミュゲル。

 花に近づいたアデルは、口角を吊り上げた。
「私の身体が弱いですって? ふふ、そんな訳ないじゃない。私はただこの白花(ミュゲル)アレルギーなだけ」
 アデルは物心ついた時から息苦しさを覚え、よく発作を起こしていた。心配した両親が医者に診せたところ、病弱だと診断された。

 ありきたりな花のアレルギーだったなんて医者は思いもしなかったのだろう。また、身体の弱いアデルが外には出ていないと聞いていたので、それこそ植物アレルギーなど疑わなかったのかもしれない。
 では、どうやってアデルは白花アレルギーと気づいたのか。答えは簡単だ。

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