だって、お姉様お望みの悪女ですもの

07



「ルーシャン様のお陰で上手くいきましたね」
 イザベルが話し掛けるとウィリアムは歩みを止め、こちらに身体を向ける。
「イザベルがあの大勢の中で頑張ったからだ。演出のために選んだ衣装だが、最高に綺麗だ。俺の見立て通りだな」

 イザベルが着ているドレスや装身具はすべてルーシャンが用意してくれたものだ。
 何でも強い女性に見えるように取り揃えたのだとか。実家から届いたものは明らかに粗悪品だったのでこれは非常にありがたかった。

「何から何までありがとうございます」
「そんなにかしこまるな。俺たちは結婚する身だ。もっと砕けた話し方をしてくれ」
 蕩けるような甘い表情のルーシャンがイザベルの頬を撫でる。イザベルは胸の奥が疼くのを感じた。

 告白を受け入れてからルーシャンの甘さが日に日に増している気がする。普段から美しい顔なのに、色気がプラスされて心臓に悪い。イザベルは胸の鼓動が速くなっているのを感じた。
「ど、努力するわ」
 イザベルが詰まりながらも答えていると、後ろから声がした。


「ねえちょっと!」
 声に反応してイザベルたちは振り返る。そこには、息を切らしたアデルの姿があった。慌てて追いかけて来たのだろう。緩くまとめてい髪は解れ、その顔には戸惑いが滲んでいる。
「どうしてイザベルがルーシャン様と一緒にいるの?」
「お姉様は彼がルーシャン様だと分かったのね」
 アデルがルーシャンを覚えていたのが意外だったのでイザベルは眉を上げた。

< 33 / 37 >

この作品をシェア

pagetop