ありふれた日常こそ、尊い。


「杠葉さん、今日の夜、一緒に食事に行きませんか?」

総務課の一年後輩である鈴木くんに呼び出され、緊張気味に言われた言葉がそれだった。

「あ、ごめんね。今日はちょっと予定があって、、、」
「じゃあ、明日は!」
「明日も予定が入ってるんだぁ。ごめんね?」

わたしがそう断ると、鈴木くんは「そうですかぁ、、、そうですよね。杠葉さん、モテるから、、、俺の相手してる暇なんて無いですよね。失礼しました。」と言うと、軽く一礼をし、わたしに背を向け事務所へと戻って行った。

「はぁ、、、」

自然と溜め息が零れる。

昨日も商品開発部の三石さんに告白されてお断りして、、、
その前は同じ販促課の先輩である工藤さんに告白されてお断りして、ちょっと気まずくなっちゃって、、、

もう毎日こんなんじゃ、申し訳なさ過ぎてメンタルがやられる、、、

わたしは、今の職場に入社して9年になるのだが、入社当時から上層部からのセクハラに遭い笑って流して、こうして先輩、同期、後輩からの食事の誘いや告白が絶えず困っていた。

実はわたしは、高校までは陰キャで完全なる社会人デビューなのだ。

今まで陰キャだったその理由は、ゲームやアニメ好きのオタクだから!

周りにそんな趣味の合う女子など居なく、周りの女子たちはお洒落や恋愛を楽しみ青春している人ばかりだった。

そんな人たちと話が合うわけもなく、わたしはいつも一人だった。

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