双子のパパは冷酷な検事~偽装の愛が真実に変わる時~
もう、そばにはいられない
旅館にこもって抱き合ってばかりいたデートから帰り、三日が経った。
その日、午後五時に食堂での仕事を終えた私は彼と住むマンションには帰らず、弓弦のいるアパートまでの道を歩いていた。
別に家出と言うわけじゃなく、鏡太郎さんから残業の連絡があったため、たまには弟とご飯を食べようと思っただけだ。
ただ、目的はもうひとつあるけれど――。
【今日、ご飯作りに行くね】
当日に連絡するなんて迷惑かなと思いつつ、家族なんだからいいよね、とメッセージを打つ。数秒置いて既読が付き、弓弦からの返信がポンと画面に現れた。
【ごめん、今日、俺家にいない】
【えっ? まさか外泊?】
【違うって。友達と映画見る約束で】
弓弦が、学校帰りに友達と映画……!
生活にゆとりができたことで高校生らしい娯楽ができるようになったんだと思うと、涙が出そうになる。映画なら健全な遊びだし、咎める理由もない。
【わかった。じゃあ作ったものは冷蔵庫に入れておく。あまり遅くならないようにね】
【了解】
元気な弓弦の顔を見て安心したかったのもあるので少し残念だが、いないならいないで、もうひとつの目的を果たしやすい。