双子のパパは冷酷な検事~偽装の愛が真実に変わる時~
消えた婚約者の行方――side鏡太郎

 琴里との旅行から帰った三日後。

 俺は弓弦くんからの誘いで仕事の後ファミレスに出向き、彼と琴里が集めた村雨奏二の事件についてまとめたファイルを受け取った。

 弓弦くんから琴里には秘密にしてほしいと言われていたので、彼女には残業と伝えてある。

「素人が集めた情報なんで役に立つかはわかりません。でも、神馬さんならわかることもあるかもしれないのでどうか目を通してください。姉ちゃんをあの事件から早く卒業させたいんです」

 琴里が弓弦くんを思うのと同じくらい、彼もまた姉のことを一番に考えていた。

 だからといって、検事である俺が感情的に『お父さんはきっと無罪だよ』と言うわけにもいかない。ふたりを助けたい気持ちが本物であるからこそ、冷静な判断が必要だ。

「わかった。しばらく預かって、内容について精査させてもらう」
「よろしくお願いします!」

 高校球児のような清々しさでテーブルに額が付きそうなほど頭を下げた弓弦くん。

 彼のことはすっかりかわいい弟のように思っているため、真面目な話が済んだ後は『好きなものを頼んで』と、食事をご馳走した。

 最初こそ遠慮していたが、メニューを眺め始めた時の無邪気な瞳が琴里そっくりで、さすがは姉弟だと微笑ましく思いながら、俺も適当に食事を選ぶ。

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