双子のパパは冷酷な検事~偽装の愛が真実に変わる時~
私が欲しいもの
双子を妊娠しているとわかったのは、鏡太郎さんのもとを離れて二カ月が経った頃だった。
私が弓弦と引っ越した先は、親友の梓がいる府中市。そこなら適度に都心から離れていて、かつ弓弦の進学先に考えていた複数の大学も近い。
なにより親友がそばにいるのが心強いからと、手ごろな物件を探して前と似た間取りのアパートに決めた。
派遣会社に相談して、新しい職場は新居から通える範囲にある介護施設へと変更。鏡太郎さんと別れた理由については、弟にも梓にも『聞かないで』と言ってある。
たとえ嘘でも嫌いになったとは言いたくなかったし、だからと言って本当のことを言ったら必要以上に悩ませてしまうと思ったからだ。
ふたりとも納得はしていないだろうけれど、なにか事情があるのだとは察してくれた。
しかし、そんな矢先。体調はよかったけれど生理が大幅に遅れていたために、悪阻ではないかと気づいた。
思い切って受診した産婦人科で、なんと双子の妊娠が発覚したのだ。
どうしよう……という不安がないわけではなかったけれど、自分でも驚くほどそれ以上の喜びを感じていた。
鏡太郎さんと別れてから、彼と過ごした日々を何度も夢に見たし、彼を思い出しては鬱々してしまう日も多かった。
だから、そんな私を元気づけるためにこの子たちが来てくれたのかもしれない……なんて。
自分の都合のいい解釈とわかっていても、つらい毎日を照らしてくれる、ひと筋の光のように思えた。