双子のパパは冷酷な検事~偽装の愛が真実に変わる時~
天才検事は結婚したいらしい

 まさか、面接の後そのまま仕事をやらされるとは思っていなかった。

 警官の制服を模したミニスカートのワンピースを着せられ、腰のホルスターに拳銃、片手に手錠のおもちゃをつけた状態で繁華街の真ん中にぽつんと立っている私を、通行人がじろじろ見ては笑う。

 頼まれたのはティッシュ配り兼呼び込みの仕事なのに、恥ずかしくてさっきから全然大きな声が出せない。

 たまに舐めるように眺めてくる男の人もいて、このまま店内に逃げ帰りたいくらいだ。

 すぐそばにある雑居ビルの七階『プリティ☆ギルティ』で店長だと名乗った金髪の男性は、用意した履歴書をちらっと見ただけですぐにぱちんと手を叩いた。

『きみ、いいね。さっそく体験入店しちゃおっか』

 ノリがいい感じの口調でそう言うと、女性スタッフに私を託す。その女性はごく普通の会社員が着るようなグレーのスーツを纏っていた。

 コンカフェにしては地味だけどああいうのなら私でも着れそう……なんて思っていたら、いざ渡されたのはまったく別の衣装だった。

『新人は警察官からって決まってるの。ある程度慣れてきたら、スーツの弁護士か検事。売り上げ上位になれば裁判官の法衣も選べるから頑張って』

 なにその謎ルール……。

 声に出さずに思ったものの、郷に入っては郷に従え。更衣室で言われるがまま着替えたら、今度は外に放り出されたというわけだ。

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