双子のパパは冷酷な検事~偽装の愛が真実に変わる時~
シンデレラとスパイの狭間

『もう生活には困らないんだから、休日と夜の仕事は辞めたらどうだ?』

 神馬さんとの婚約を決めてから彼にそう勧められたため、カフェのバイトは徐々に勤務日を減らし、八月いっぱいで退職することにした。

これまで働きづめだったので少し戸惑ったけれど、暇ができたことで心にもゆとりが生まれ、家事も今までより苦にならなくなった気がする。

 神馬さんはお盆後半から五日間夏休みが取れるということだったので、ちょうど食堂の夏季休業期間と重なっていた日に弓弦と会う時間を設けてもらった。

 彼の計らいで連れて行ってもらったのは、焼き肉店の豪華なランチ。

 弓弦は感激を態度に出さないよう頑張ってはいたのだろうけれど、明らかに目がキラキラしていた。

 神馬さんは梓と会った時と同じ好青年風のキャラを演じていたので、弓弦も彼の職業が検事だからと言って毛嫌いすることもなかった。

 むしろ法律家の先輩としてアドバイスしてほしいと連絡先の交換までしていて、そこまで気を許しちゃって大丈夫かと、姉として心配になったくらいだ。

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