ふたりだけのオーキッド・ラグーン
2*真紘、ダウンする
――もう面倒だから、このままいくよ。
――どこへ?
――東京。時間がないから。さあ、乗って。
――真紘、人さらいじゃないって、ひと言お願いできる?
――お父さん、この人、私の東京本社での上司なの。怪しい人じゃないの。東京の仕事が残っているみたいだから、ちょっといってくるね。
ー・-・-・-・-・-・-
ベッドに横たわったままの真紘を上から見下ろして、瑠樹がいう。
「真紘、時間だからいくけど、まだ調子が悪いようなら無理するな」
「瑠樹さん、ごめんなさい。今日もここでお見送りになっちゃった」
「それは気にしなくてもいい。昼食をコンシュルジュにお願いしたから何か持ってきてくれるだろう。足りなければウーバーを使ってくれてもいいし」
コンシュルジュといわれて、真紘は「え?」という顔になった。
真紘と瑠樹が住んでいるこの高級サービスアパートメントには、掃除や洗濯のハウスキーピングサービスがついている。だけど食事は自分で用意するというスタイルだ。瑠樹からはホテルに連泊するような感じだと説明された。
先任者の暁紀夫妻は子供がいたから高級サービスアパートメントに住まず、メイド付きの郊外の邸宅で生活していた。真紘と瑠樹の場合、新婚というのもあれば、まだまだふたりで楽しみたいだろうということで、中心部の高級サービスアパートメントを選択したのだった。
真紘は、料理は得意ではない。でも現地では専業主婦として過ごすこととなっている。これは料理を練習する時間が取れるし、人並みレベルにまでマスターする絶好の機会である。
心の底から真紘は、料理が上手くなりたい。だって瑠樹さんに仕事しながら料理も任せるなんてこと、できない! 妻として、みっともないと思う。
日本で渡航準備を進めているときに瑠樹から高級サービスアパートメントの住居を提案されて、真紘は迷わず同意したのだった。
いざ、そうやって完全自炊を選択したのはいいものの、しょっぱなからコケてしまうとは!
新婚早々、しかも到着日にという大失敗である。
――どこへ?
――東京。時間がないから。さあ、乗って。
――真紘、人さらいじゃないって、ひと言お願いできる?
――お父さん、この人、私の東京本社での上司なの。怪しい人じゃないの。東京の仕事が残っているみたいだから、ちょっといってくるね。
ー・-・-・-・-・-・-
ベッドに横たわったままの真紘を上から見下ろして、瑠樹がいう。
「真紘、時間だからいくけど、まだ調子が悪いようなら無理するな」
「瑠樹さん、ごめんなさい。今日もここでお見送りになっちゃった」
「それは気にしなくてもいい。昼食をコンシュルジュにお願いしたから何か持ってきてくれるだろう。足りなければウーバーを使ってくれてもいいし」
コンシュルジュといわれて、真紘は「え?」という顔になった。
真紘と瑠樹が住んでいるこの高級サービスアパートメントには、掃除や洗濯のハウスキーピングサービスがついている。だけど食事は自分で用意するというスタイルだ。瑠樹からはホテルに連泊するような感じだと説明された。
先任者の暁紀夫妻は子供がいたから高級サービスアパートメントに住まず、メイド付きの郊外の邸宅で生活していた。真紘と瑠樹の場合、新婚というのもあれば、まだまだふたりで楽しみたいだろうということで、中心部の高級サービスアパートメントを選択したのだった。
真紘は、料理は得意ではない。でも現地では専業主婦として過ごすこととなっている。これは料理を練習する時間が取れるし、人並みレベルにまでマスターする絶好の機会である。
心の底から真紘は、料理が上手くなりたい。だって瑠樹さんに仕事しながら料理も任せるなんてこと、できない! 妻として、みっともないと思う。
日本で渡航準備を進めているときに瑠樹から高級サービスアパートメントの住居を提案されて、真紘は迷わず同意したのだった。
いざ、そうやって完全自炊を選択したのはいいものの、しょっぱなからコケてしまうとは!
新婚早々、しかも到着日にという大失敗である。