ふたりだけのオーキッド・ラグーン

3*真紘、回復する

 ――では、いいですか? 結婚してシンガポールへ同行をというのが希望だそうですが、どうしてその相手が私なのですか?
 ――え、だって、真紘は俺のカノジョだろ。それに、事業に失敗して俺が無一文になったとしても、真紘なら俺のことを捨てずにいてくれると思ったから。

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 シンガポールへ着いた直後に熱中症で倒れた真紘であったが、さすがに四日ほど養生していれば体は落ち着いてきた。
 寝ているだけの生活だったので、体はガチガチ。少しは動かないと……と、今日は服を着替えて起きることにした。ただし、外出できるかどうかはまだまだ未知数だ。
 今はいいとして、「早くこの気候になれないとマズいよな」なんて思いながら服を選ぶ。

 服を着替える前にシャワーを浴びたいなと思う。でも体を濡らすとまた調子が悪くなりそうで、真紘はやめることにした。
 簡単にだけどリラックスした服に着替えてしまうと、気持ちがスッキリする。いま着ているのは、ふんわりシルエットのワンピースタイプのルームウェアだ。
 着替え終わって改めて キスの餌食となった蘭の花をみた。

 この部屋に到着したときには、この花はなかった。
 その蘭のアレンジメントをよ~くみれば、カードが添えられている。 差出人は鎌田茉莉とある。

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