裏SNS " F " - 友か、秘密か -

- side - Saegusa Riko

長く感じた夏休みも、明日で終わる。

勉強机に広げた赤本のページを睨みつけながら、
三枝 理子はシャーペンを強く握った。



( ……全然、進まない )



踊るように並ぶ数式は、
理子の未来を導いてくれるはずのものだった。
――なのに、頭に入ってこない。

ページをめくる手が止まる。
何かが静かに擦り減っていく気がしていた。



一学期、Fの話題が出なかった日は、
おそらく一日もなかった。

担任の教師は
「 情報教育 」や「 社会倫理 」といった
もっともらしい言葉で語り、

クラスメイトたちは、
まるで水を得た魚のように
スマホの画面に夢中になっていた。



その渦のなかで、理子は――
まるで世界から切り離された部外者のように、
静かに孤独を深めていった。



" こんなの、勉強の妨げでしかない "



心の中で何度も繰り返した。
けれど、それを口にすることはできなかった。

Fに夢中なクラスメイトたちに反論すれば、
自分の居場所がさらに小さくなることを、
理子は本能的にわかっていた。
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