裏SNS " F " - 友か、秘密か -
- side - Ohashi Shiho
始業式の翌朝。登校してすぐ、
大橋 詩帆は教室の異様な空気に気づいた。
まだHRは始まっていないというのに、
数人のクラスメイトはスマホを手に押し黙り、
ほかの生徒も静かな声で囁き合っている。
「 ……ねえ、これマジ?」
「 誰が、こんなの…… 」
詩帆は席につくと、
急いで自分のスマホを取り出す。
Fの通知がひとつ。
新しい投稿があったことを示していた。
【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 鴨田 紗英
2年F組の担任である鴨田 紗英は、
スナックで働いていた。酒を出し、
男に媚びるように笑っていた。
生徒の父親とも親しかったようだ。
Point ◇ 120pt 】
指先が少し震えた。
先生が“F”の標的になるなんて、
思ってもみない事態だ。
HRが始まると、
鴨田先生はいつものように教壇に立つ。
けれど、
その顔は青白く、目はどこか虚ろだった。
そして、誰一人――
普段はHR中でも構わず発言する生徒でさえも、
今日は何も言わない。
まるで、触れるのがタブーだというように。
その沈黙に、息が詰まる。
( こんなの、許されていいの?)
詩帆は唇を噛んだ。
教師が、スナックーー
水商売の経験があるということは、
どこかで問題になり得るのかもしれない。
でも、それを「暴露する権利」が、
たった一人の投稿者に委ねられていることが、
どうしようもなく理不尽だった。
誰かが行動しなければ、
きっとこのまま、鴨田先生は壊れていく。
( 開示請求を出そう……全員分、集める )
詩帆は決意した。
一人ずつ、クラス全員から開示請求を集める。
そのためには、
まず話を聞いてもらわなくてはいけない。
大橋 詩帆は教室の異様な空気に気づいた。
まだHRは始まっていないというのに、
数人のクラスメイトはスマホを手に押し黙り、
ほかの生徒も静かな声で囁き合っている。
「 ……ねえ、これマジ?」
「 誰が、こんなの…… 」
詩帆は席につくと、
急いで自分のスマホを取り出す。
Fの通知がひとつ。
新しい投稿があったことを示していた。
【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 鴨田 紗英
2年F組の担任である鴨田 紗英は、
スナックで働いていた。酒を出し、
男に媚びるように笑っていた。
生徒の父親とも親しかったようだ。
Point ◇ 120pt 】
指先が少し震えた。
先生が“F”の標的になるなんて、
思ってもみない事態だ。
HRが始まると、
鴨田先生はいつものように教壇に立つ。
けれど、
その顔は青白く、目はどこか虚ろだった。
そして、誰一人――
普段はHR中でも構わず発言する生徒でさえも、
今日は何も言わない。
まるで、触れるのがタブーだというように。
その沈黙に、息が詰まる。
( こんなの、許されていいの?)
詩帆は唇を噛んだ。
教師が、スナックーー
水商売の経験があるということは、
どこかで問題になり得るのかもしれない。
でも、それを「暴露する権利」が、
たった一人の投稿者に委ねられていることが、
どうしようもなく理不尽だった。
誰かが行動しなければ、
きっとこのまま、鴨田先生は壊れていく。
( 開示請求を出そう……全員分、集める )
詩帆は決意した。
一人ずつ、クラス全員から開示請求を集める。
そのためには、
まず話を聞いてもらわなくてはいけない。