裏SNS " F " - 友か、秘密か -

- side - Sakakibara Moko

昼休み。
八雲大学附属高校、2年F組。



春の光が
斜めに差し込む教室の中で、



榊原 萌子は自分の席――



右から3列目、
前から2つ目に腰を下ろした。



萌子の席から
少し離れた右斜め前方、

いちばん右の列で
スマホを見せ合いながら笑う

瀬川 琉生 と
桐島 翔 を見つめる。



瀬川 琉生は、
誰が見ても「 華がある 」と思わせるタイプ。



スラリとした長身に、
細部まで計算されたような
センター分けの黒髪。

どこか都会的な雰囲気をまとっていて、
目立つというより " 映える " 存在。



一方、桐島 翔は
派手さこそないけれど、
どこか目を引く。



誰にでも優しくて、
さりげなく気を遣える、

一見すると、
" いい人 " だけど、



切れ長の目は
穏やかに笑っているのに、

ふとした瞬間に
こちらを見透かしているような
鋭さを宿している。



ルックスが良くて、
成績も優秀、ノリもいい。

どちらもF組の中で
一際オーラを放つ男たち。



「 ねえ見て、これヤバくない?」



すぐ背後の席から、
藤井 舞が肩をつつく。



振り返ると、
彼女はにやにやしながら
スマホの画面を突き出してきた。



【 投稿主 ◇ 匿名 / TARGET ◇ 玉置 賢斗

玉置 賢斗は学年末テスト1位だった。
2年F組の席順は、定期テストの成績順。

右前の玉置から後ろが5位、
次にその隣の列……って並び。

つまり、窓側ほど " 下位 " ってこと。
でも、F組は全員頭いいから安心してね(笑)

Point ◇ 390pt 】



一読して、
萌子は笑いを漏らす。



「 うわ〜、こういうの書く人、
なんか性格出るね 」

「 ターゲットって言うより、
クラス全員の暴露みたいなもんじゃん 」



舞はそう言いながら
教室を見渡した。

舞はこういう、
" 炎上ギリギリのネタ " を
純粋にエンタメとして楽しんでいる。



「 でも……
この感じ、ほんとに、成績順じゃん 」



萌子も顔を上げ、
教室の右側に視線を送る。

玉置 賢斗 や琉生、翔は
目立って成績が良いし、

他も言われてみれば
しっくりくる顔ぶれ。



萌子の席は、
3列目の前方。



中の下ーー
そんな評価になるのかもしれない。



特別選抜クラスにいる以上、
" 上位じゃなければ意味がない " という
無言の圧が張り詰めている。



「 全員頭いいから安心してね、とか超イヤミ。
左側の人、完全にディスられてるよね 」



舞がふくれたように言う。
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