裏SNS " F " - 友か、秘密か -

- side - Saegusa Riko

九月の終わり。

夏の終わりと秋の始まりが入り混じる
この季節の空気が、好きだった――はずだった。

けれど、窓を開けることすらできないまま、
三枝 理子の時間は過ぎていく。



学校に行かなくなって、
今日で三週間と数日。

曜日の感覚は薄れていったけれど、
日付だけはカレンダーで確認していた。



10月に近づくにつれて、
あの教室では中間試験が始まる。

それが終われば、体育祭と文化祭。
去年もほとんど参加をしたとは言えないが、
もはや今年は、理子には関係すらない。



テストを受けなければ、
理子の席は " 右側 " から消える。

テストが終われば、
理子の居場所はもうない、ということが
席順としてはっきりしてしまう。

そんなことを想像するたびに
胸の奥がヒリついた。



誰よりも早く提出物を出して、
誰よりも模試の点数を気にして、

誰よりも、何よりも、
勉強に時間を使ってきたはずなのに。

何の意味もなかったとでも言うように、
たったひとつの投稿で、
理子は上位から落ちてしまった。



机に並ぶのは、
変わらず山のような参考書とノート。
壁には自作のスケジュール表。

けれどとても、
何かを頑張る気にはなれなかった。



母は、毎朝変わらず私のドアの前に立ち、
「 朝ごはんできてるよ 」と声をかける。
理子は「 わかった 」と返すだけ。

朝ごはんを食べる日もあれば、
何も食べない日もある。母は責めない。

少し離れた場所から見守るように、
ただ、「 大丈夫?」と静かに聞くだけだった。
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