裏SNS " F " - 友か、秘密か -

- side - Ichinose Haru

教室の窓から、
秋の日差しが差し込んでいた。

一ノ瀬 悠は、
配られた成績をぼんやりと眺める。



ーー13位。560点。



順位は変わっていないけれど、
点数は大きく上がっている。

悠以外にもほとんどの生徒が点数を上げ、
少し前まで教室は歓喜に包まれていた。



順位や点数を確認し終わると、
F組の生徒はそれぞれの机へと戻っていく。

教室を見渡せば、
多くのクラスメイトがノートを広げていた。



少し後、鴨田先生が教室に入ってきて、
帰りのHRが始まる。

先生は教壇に立ち、教室を見渡すと、
やわらかく微笑んだ。



「 みんな、テスト、お疲れさまでした 」



一瞬、空気がふわっと緩む。



「 とても良い結果でした。
みなさんの努力を、誇りに思います 」



ぱちぱち、と拍手が起こる。
教室が、あたたかい空気に包まれていく。



ーーけれど、次の瞬間
鴨田先生は少しだけ表情を引き締めた。



「 そして、Fについてですが、
アプリは本日をもって、終了します」



一瞬、時間が止まったようだった。



「 どういうこと?」

「 え、今日まで?」

「 停止じゃなくて、終了?」



榊原 萌子が真っ先に反応し、
藤井 舞、百瀬 梨々花がその言葉を追う。

ざわついた声が教室を満たし、
それはやがて波紋のように広がっていった。



悠もまた、
胸の奥で何かがざわつくのを感じていた。



あの " F " が——



半年間、善悪も友情も、
すべてを揺さぶってきたあのアプリが、
今日で終わる。

日常の一部を
突然、もぎ取られたような感覚だ。
< 153 / 190 >

この作品をシェア

pagetop