裏SNS " F " - 友か、秘密か -

- side - Ohashi Shiho

八雲大学、グラウンドの端。
白線を引く生徒たちの姿を眺めながら、
大橋 詩帆は声を張り上げた。



「 ムカデ競争の練習やるよー!
F組、2列に並んでー!」

「 ムカデってさ、
絶対俺向いてないと思うんだけど 」



瀬川 琉生がぶつぶつ言いながら、
縄を手に持つ。



「 何言ってんの?
バランス感覚だけはピカイチでしょ?」




百瀬 梨々花は笑いながら、
体育着の袖をたくし上げる。



「 転んだら全部俺のせいになんの、
納得いかね〜 」

「 はいはい、さっさと縛る!」



榊原 萌子が縄を引っ張る。
まずは、男子列の練習から。



「 おれ最後尾でいいわ、
誰にも文句言われなさそうだし 」

「 最後尾って責任重いぜ?気抜くなよ 」



桐島 翔がそう言うと、
日下部 律が笑いながら返す。

その横では根岸 幸太と早乙女 俊も
「 転びそ〜 」とふざけ合っていた。



一方、女子の列では
朝比奈 千夏がぴょんと手を上げた。



「 私、先頭やるよ!」

「 千夏が先頭?
え、そんなガチのやる気モード?」



梨々花が目を丸くする。



「 だって勝ちたいじゃん。3位以上!」

「 おお、かっこいい……」



桐島 翔が冗談交じりに拍手を送ると、
クラスがどっと沸いた。

後方では、樋口 蓮が
南雲 しずくに縄の結び方を教えている。



「 それ、もうちょい上で結んだ方がいい 」

「 あ、うん。ありがとう 」



黙々と紐を結ぶ 宮下 澪 と、
澪をサポートする 白石 遥華も、
黙ったまま頷き合う。



「 うちのクラス、意外とまとまりあるよね 」



藤井 舞が立石 葵にそう呟くと、



「 " F " があったからじゃない?
いい意味でも悪い意味でも、だけど 」



と、葵が意味深に返した。

詩帆はそんなみんなを見渡しながら、
静かに笑った。



そして迎えた、体育祭当日。

白組となったF組は、
一致団結してさまざまな競技に挑む。



「 翔ーー!走れーー!!」

「 うっしゃあ、抜いた!」

「 ねぎ速っ!」



熱狂と汗と笑顔のなか、
最終得点が発表された瞬間、
F組から歓声が上がる。



「 まじか、2位!?本当に!?」

「 B組には勝てなかったけど……
でもこれ、すごくない?」

「 ねえ、めちゃくちゃ盛り上がったよね?」



大歓声と笑いに包まれながら、
体育祭が終わっていく。

教室に戻ると、
翔が小さく呟いた。
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